アラスカに暮らす

傾いたログキャビンを買った 〜アラスカに暮らす(19)〜

2011年05月16日

アラスカに暮らす(19)

■ドキドキ 自分で修理

 私たち家族が暮らす土地が売りに出されているのを見つけたのは、2年前の春。目当ての地域だった上、未完成だがログキャビン(丸太造りの家)が建ち、土地の広さとシラカバの森も気に入った。

 早速、オーナーに電話を入れ、鍵を送ってもらって見学した。11年間放置されていたためか、やぶがキャビンをのみ込みそうな勢いで繁茂していた。材の傷みも進み、ドアを開けて、中に入ると違和感を覚えた。

 それもそのはず、キャビンの端と端で33センチもの高低差が生じていた。夏と冬の激しい気温差で、土壌が凍結融解を繰り返し、家が傾くことは珍しいことではない。「ありゃまっ、簡単だから、自分で直してちょうだいな」。オーナーからは事もなげな返答だ。

 思案したあげく、北極圏でキャビンを建てていた友人のトッド・アームストロングに会いにいくことにした。「ここと同じで水道も電気もないけれど、いい所を見つけたよ。家は傾いているけどね」「おめでとう! これで君もアラスカンだ」と彼は大変喜び。20トンまで持ち上げられる油圧式ジャッキをくれたのだった。

 戻ると、ジャッキをさらに2つ、街のホームセンターで購入した。水平を調べ、かさ上げする柱の隣にジャッキをセットする。「大丈夫かなあ」。不安と緊張を感じつつ、ジャッキのハンドルを慎重に上下に動かした。

 ギギギギッ、ミシッ。きしむような音におどおどしながら、ひるまず続けると、ミリ単位でキャビンが持ち上がり、柱との間に隙間ができた。ほっとするのもつかの間、適度にキャビンが浮いたところで台座から柱を外し、足りない長さの分だけ材を足す。それをボルトで固定し、素早く台座に戻した。

 ジャッキの油圧を抜くと、キャビンが下がり、無事柱の上に載った。ここアラスカでは、傾いた家に始まり、そこに行く道がない土地でさえも普通に売買されている。

 実際、最初に手に入れた土地は森を切り開き、200メートルの道を自分で造らなくてはならなかった。大ざっぱとも、おおらかとも取れるこのあたりの雰囲気は、まさにアラスカならではだ。

ジャッキでログキャビンを持ち上げて柱を外す。未知の経験に緊張も走るが、子供はなんのその=米国アラスカ州フェアバンクス郊外でジャッキでログキャビンを持ち上げて柱を外す。未知の経験に緊張も走るが、子供はなんのその=米国アラスカ州フェアバンクス郊外で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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