アラスカに暮らす

春一番の味覚、シラカバ水 〜アラスカに暮らす(17)〜

2011年05月02日

アラスカに暮らす(17)

■すがすがしい喉越し

 シラカバ水をご存じだろうか。雪解けが進むこの季節、冬の間休眠していた木々が眠りから覚め、根から勢いよく水分を吸い上げる。わが家の森では、4月下旬から5月初旬の2週間がこの時期にあたり、シラカバ水を採ることができる。

 初めてシラカバ水の採取を試みたのは昨年春。「すごいや! こんなにたまってるよ」。ある日、息子が小躍りしていたのを思い出す。方法は簡単。シラカバの幹にハンドドリルで直径5ミリ、深さ2センチ程度の穴を開ける。その穴にストローを挿し、ストローのもう一方の先はペットボトルに入れる。

 すると、透明な液体がじわじわと染み出し、ストローを伝ってペットボトルの中に落ちてくる。面白いのはそのリズム。こちらは「それ出せ、やれ出せ、ぽたぽたん」、あちらでは「やれやれどっこい、ぽっつりぽっ」といった具合。木によってまるで異なる性格を見るようだ。

 せっかちな木は、1リットルのペットボトルを半日足らずで満たしてくれる。朝一番のとれたてのシラカバ水はキーンと冷え、まろやかなシラカバの香りと、ほんのりとした甘さが混ざり合ってすがすがしい喉(のど)越しだ。

 このシラカバ水を煮詰めるとシロップになる。案外大変で、原液の約100分の1にまで煮詰めなくてはならない。昨春、日がな一日、ストーブの上でのんびり煮詰めていると、無色透明だった液体が次第に琥珀(こはく)色に変わり、やがて濃いビールのような茶色に。このくらいになるとシロップとして完成だ。

 なめると酸味が強く、お世辞にもおいしいとはいえなかった。そのことを知人に話したら、シラカバ水は傷みやすいので、シロップにするにはすぐに加熱せよとのこと。本来は甘いらしい。ふむ、ふむ。今年はもう少しうまくできそうだ。

 ところで、このシラカバ水、二日酔いの特効薬になることを身をもって知ったのが、わらをもつかむ思いで、すがったある朝のこと。しかし、間もなく、焼酎を割ると格別にうまいといううわさを小耳に挟んでしまった。ううむ、悩ましい季節である。

ストローを伝って、ペットボトルにシラカバ水がたまる。そのまま飲んでも煮詰めてシロップにしてもいい=米国アラスカ州フェアバンクス郊外でストローを伝って、ペットボトルにシラカバ水がたまる。そのまま飲んでも煮詰めてシロップにしてもいい=米国アラスカ州フェアバンクス郊外で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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