アラスカに暮らす

まき作り 〜アラスカに暮らす(8)〜

2011年02月28日

アラスカに暮らす(8)

■相棒はチェーンソー

 「いいか、ハンドルをしっかり握って」。息子に初めてチェーンソーを体験させたのは昨年2月、彼が6歳のときだった。

 自分の背丈ほどもあるチェーンソーを一生懸命に持ち上げようとする息子の背後に回り、一緒にハンドルを支える。原野暮らしでは、暖房のためのまき作りは欠かせない。

 その第一歩ともいえるチェーンソーの扱いを覚えることは必須である。わが家では、少なくとも9月から5月にかけての9カ月分、小型トラックに換算すると約10杯分のまきが必要だ。まき作りは、木の生育が休眠状態となり、水分含有量も少なくなる冬に始めるのが良いとされる。

 この冬も、森に入り、息子に木の切り方を教えた。「木の傾きに注意しながら、いつでも逃げられるようにしておけ」。ブイーン、ブイィィーン。チェーンソーのアクセルを指でいっぱいに押し込むと、エンジンの甲高い音が木立に反響する。直径20センチほどの幹の根元から50センチくらいの部分に高速で回転するチェーンを当てると、勢いよくおがくずを吐き出しながら、チェーンがぐいぐいと幹に食い込む。

 ビシッと、最後の支えが崩れる鋭い音を立てた次の瞬間、背丈15メートルはある幹はめきめきと音を立て、枝々に積もった雪を粉砂糖のように散らしながら、スローモーションの映像みたいなゆっくりとした動きで、どすーんと雪面に倒れた。

 「すごいねパパ。やったね!」。倒した木は、ストーブに入るように40センチの長さに切り分け、そりに積んでまき小屋へ運ぶ。雪のある冬に、まき作りをする理由の一つには、そりが使えることもある。そりを使うと、重さ100キロくらいまでは人力で引くことができるのだ。

 「パパ、大人になったら、ぼく専用のチェーンソーが欲しいな」。「そうだね、一人で使えるようになったらね。あと5年は先かな」。興奮と好奇心を隠し切れないまん丸の目でそう言ったときの少し誇らしげな表情に、少年へと成長していく息子の姿を見た気がした。

シラカバをチェーンソーで倒す。まき作りの一歩はここから始まる=米国アラスカ州フェアバンクス郊外でシラカバをチェーンソーで倒す。まき作りの一歩はここから始まる=米国アラスカ州フェアバンクス郊外で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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