アラスカに暮らす

日の出前の登校 〜アラスカに暮らす(7)〜

2011年02月21日

アラスカに暮らす(7)

■待ち遠しい太陽の光

 朝7時、目覚ましの音で目が覚めた。もぞもぞと寝袋から抜け出し、ヘッドランプをつけてから、はしごを下り、毎朝一番そうするように、まきストーブの中をのぞいた。

 一晩もってくれたまきの破片が、オレンジ色にちろちろくすぶっている。まきを運び込むため、デッキの戸を開けて外に出ると、天頂付近に北斗七星の輝きがかすかに残りながらも、東の低空には薄明の兆しが漂っていた。ランプに灯をともし、ストーブにまきをくべていると、息子が目をこすりながらはしごを下りてきた。

 「さあ着替えて、朝飯食べて。目玉焼きはいくつ?」。「うーん、2つ」。あらかじめストーブの上で熱しておいたフライパンに生卵を落とすとジュッとおいしそうな音がはじけた。「急いで食べてね」。車の暖機運転を始めていた家内が眠たげな息子をせかせる。「半熟卵いっちょうあがり!」。息子は牛乳に浸したコーンフレークと熱々の卵をかきこむと、ジャンパーに袖を通し、弁当と宿題を入れたリュックを肩にかけて、急ぎ足で車に乗り込んだ。

 2人を見送ると、ストーブの上の鍋から熱い湯を注ぎ、コーヒーで一息ついた。時計の針は7時45分。スクールバスがヘッドライトで雪の坂道を照らしながら停留所に着いたころだろう。朝食をとり、ランプの横で文庫本のページをめくっていると、東の窓から遠望できる空が白々と明るさを増していた。

 授業開始は8時半。学校で子供たちが黒板に向かい始めた時分からほどなく、上空にたなびく幾筋かの雲がストーブの炎のように鮮やかなオレンジ色に染まり、日の出が間近であることを告げた。

 2月9日。この日のフェアバンクスの日の出は午前9時10分、日の入りは午後5時1分。1年で一番日が短い冬至に比べれば、もう4時間半近くも日が延びたことになる。北極圏まで直線距離でわずか200キロ足らずの高緯度に位置するわが家の辺りでは、この季節、毎日およそ6分ずつ日が長くなるのだ。

 2月に入ると、それまで南側の森の向こうに隠れていた太陽が、日増しに高くなっていくのがうれしい。教室の窓からもきっと同じ太陽が見えていることだろう。

日の出前に登校し、日没後に下校。高緯度地方ならではの真冬の通学=米国アラスカ州フェアバンクス郊外のスクールバス停留所で日の出前に登校し、日没後に下校。高緯度地方ならではの真冬の通学=米国アラスカ州フェアバンクス郊外のスクールバス停留所で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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