アラスカに暮らす

真冬は外が冷凍庫。冷蔵庫のガスも不要 〜アラスカに暮らす(4)〜

2011年01月24日

■アラスカに暮らす(4)

 450ドルで中古の「プロパンガス冷蔵庫」売ります−。そんな広告をネットの個人売買サイトで見つけたのは、二年前の夏のことだった。当時、僕たちは電気が来ていない今の土地に引っ越したばかり。こんな所でも冷蔵庫が使えるのだと知って、小躍りしたものだ。

 矢も盾もたまらず、フェアバンクス市内のおじさん宅に現物を見に出かけた。ちょっと見ただけでは、普通の電気冷蔵庫と同じに見えたものの、しゃがんで下から底をのぞき見ると、大きな違いがあった。

 なんと冷却するという本来の機能とは裏腹に、青い口火がともり、ほのかなぬくもりを感じさせてくれるではないか。この冷蔵庫は、その名の通り、プロパンガスを燃やすことで冷やすという、まるで手品のような不思議な代物だった。

 どうやら、プロパンガスの燃焼熱で触媒が作用するときの熱交換で、冷やせるらしい。なるほど、言われてみると、本体から、電気コードの代わりにガスを送り込むチューブが飛び出している。

 売り主のおやじさんの説明に感心しつつも、使い込まれた外見から、もう少し安くはならないものかと案じていたら、察したかのように「俺が中古で買ったときもこの値段だったからね。新品だったら、軽く2,000ドルは下らないねぇ」などと、分かるような分からないようなことを言って、したたかにも強気な態度を崩さない。結局、おやじの手に450ドルを渡し、この冷蔵庫を手に入れた。

 季節は冬。家の一歩外は、肉も魚もあっという間にカチコチになってしまう気温だ。食材を冷凍保存したいときは、屋外に適当な箱を置いて、入れておけば、冷凍庫の役割を果たしてくれる。真冬のフェアバンクスは、超巨大な冷凍庫の中に街があり、家が立っているようなものなのだ。

 冬に、この冷蔵庫を使う場合には、上段に氷で満たした鍋を入れておけば、中は十分冷えてくれる。だから、プロパンガス代もかからない。原野の暮らしでは、ちょっとしたアイデアで足りないものを補うことができる。それこそが、こうした暮らしの楽しさだと言ってもいい。

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氷が入った鍋を冷蔵庫に入れて、中を冷やす=米国アラスカ州フェアバンクスの自宅で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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