アラスカに暮らす

真冬の雨にご用心 〜アラスカに暮らす(3)〜

2011年01月17日

アラスカに暮らす(3)

■バス走れず学校は休校

 昨年11月22日。その日も、普段と変わらない月曜日の朝になるはずだった。
 「雨だよ、雨が降ってる。見て、パパ」。はて?と思い、枕元に置いてあるヘッドランプをつけると、寝袋から抜け出して窓の外を照らした。

 暗闇の中で、降り注ぐ雨粒がきらきら光って見える。11月といえば、時に氷点下40℃にもなる厳冬期。そんな季節に雨が降るなんて聞いたことがない。階下では、妻が息子を車でスクールバスの乗り場まで送り出すところだった。

 季節はずれの雨の中、二人が乗った車を見送った。バスが来るところまで片道約7キロ。待ち時間を入れても、往復30分ほどの道のりだ。ところが、その日、妻は1時間たっても帰ってこない。心配になって電話すると、待てど暮らせどバスが来ないのだという。

 屋外の寒暖計がゼロ℃を指していた。この気温で雨が降ると、路面が凍りつくので極めて危険だ。ラジオがこんなふうに伝えた。

 「フェアバンクス中の道路が凍結した雨でスケートリンクのようになっています。今日は、車での外出は極力避けてください。スクールバスにも大幅に遅れが出ています」。そこへ今度は妻から、バスの運転が困難で、学校が休校になったとの連絡。どれほど寒さが厳しくても、休校になんてならなかった学校が雨で休校とは・・・。

 ぎぎぎっー。翌日の深夜、何やら不気味な音で目が覚めた。次の瞬間、どどどっと屋根が鳴ると、ずしん!と地震が来たかのように、ログキャビン(丸太小屋)全体が揺れた。朝になり、表に出ると、人の丈ほどの雪山ができていた。確かここには車が一台あったはず。

 雨水をたっぷり吸って重く、氷のように硬い雪をスコップでわっせわっせと掘り起こした。現れたのは、屋根が陥没し、フロントガラスがクモの巣のようにひび割れした愛車の姿だった。「痛い出費だなあ、参った」と思っても、後の祭り。

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自宅の庭の木も、枝の上の雪が含んだ大量の雨の重みで倒れてしまった=米国アラスカ州フェアバンクスで

 後で知ったことだが、フェアバンクスでの真冬の雨の観測記録は、実に1937年以来。結局、その週の間、学校はまるまる休みになってしまった。

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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