アラスカに暮らす

水をくみ、水を作る 〜アラスカに暮らす(2)〜

2011年01月10日

アラスカに暮らす(2)

■雪を温めてお風呂に

 「そろそろ水がないよ」。「あっそう、じゃあ水くみに行くかぁ」−。
 水道がない暮らしでは、定期的に井戸水をくみにいく作業が欠かせない。井戸があるのは、フェアバンクス市街地とわが家のちょうど中間、車で20分ほどのフォックスと呼ばれる所だ。この井戸は誰でも利用でき、うれしいことに無料。ポリタンクを給水口の下に置いて、ボタンを押すと、最初はちょろちょろと、すぐに勢いよく水が出てくる。

 「ふひゃー、今日も冷えるねえ」。ある日、いつものように水をくんでいると、一人の女性がやってきた。「うちは水道水がまずくてね」と話す彼女は、フェアバンクスの東隣の町から一時間かけて来たのだという。

 「僕はここから25キロ北に行ったところです」と言うと、「そんなところに住むなんてあんたも好きねえ」とでも言いたげに、たるのような腹を揺らして「ひゃひゃひゃ」と甲高い声で笑った。そして「これで作る水割りは最高よね」とウインクしたのだった。

 この井戸水はおいしいと評判。週末ともなると行列ができることもあるし、井戸のすぐ近くでは同じ水脈を利用し、米国最北の地ビールも造られている。

 私たちがこの水を蓄えるのに使っているポリタンクは約27リットル用。上部にプラスチック製の蛇口が付いている。満タンのときはかなり重く、台所の流しに持ち上げるときなど思わず「よっこらしょ」と声が出てしまう。

 わが家には13個のポリタンクがあり、炊事、洗面、食器洗い、頭や体を洗うのにも、おおむねこの水を使う。井戸に行くのは夏なら週に二回は必要だが、冬は十日に一回程度だ。というのも、ストーブの上にかけた鍋で雪を溶かして水を作ることを最近始めたから。

 飲み水とまではいかなくても、適温に温めた雪湯は頭や体を洗うのなら十分。「やっぱりお風呂はいいね、パパ」。赤々と燃えるまきストーブの前に置かれた金だらいの中で、雪湯を浴びる息子は実に気持ちよさそうだ。このような暮らしでは、多少なりとも遠慮なしに湯を浴びられるというのは、やはりうれしいのだ。

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まきストーブで溶かした雪を温め、金だらいの中で湯を浴びる息子=米国アラスカ州フェアバンクスの自宅で

プロフィール

河内牧栄(かわうち・まきえい):ネーチャーガイド兼写真家

1966年、岐阜県各務原市生まれ。日本大芸術学部卒業後、大手出版社に勤務。退社後、30代で一人旅をしたアラスカの大自然に魅せられ、2003年に移住した。ネーチャーガイド兼写真家。アラスカ州フェアバンクスに妻(48)と長男(7)の3人暮らし。

ホームページ:「ネイチャーイメージ」

※「アラスカに暮らす」は中日新聞朝刊に毎週月曜日に連載されています。

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